なぜ撚り糸テーパーラインは衰退したのか
先ず確認しておきたいのはレベルラインと比較してどちらがよく釣れる釣れないといった類の話ではないということ。
撚り糸が衰退した要因として考えられるのは、商業目線で考えたときに生産性が非常に悪いということが挙げられる。
これについては現在の釣り具メーカー各社の動向を見れば一目瞭然で、時間と人手を必要とする撚り糸テーパーラインよりも機械で大量生産できるレベルラインを主力商材としている現状がある。
つまりレベルラインに比べて確かに単価が高い撚り糸テーパーラインではあるが、実はそれを生産するための時間と人件費を考えると割りが合わない商材なのである。
左が機械撚り、右が手撚り
ラインの表面の凹凸の違いがある。
なめらかなほどに無駄な空気抵抗を受けない。
見た目にはわずかな違いであるが飛ぶ力は驚くほどに違う。
細く密に撚り合わされた手撚り糸は飛ぶ。
レベルラインのメディア戦略とともに撚り糸の衰退は加速し、わずかに生産を続けていた個人経営の釣具屋も手間暇がかかるため次第に作らなくなった。それよりも比較的短時間で巻ける毛鉤作りに力を注いだ。撚り糸テーパーラインを1本仕上げる間に、毛鉤なら何十個も作れる計算になる。さらに毛鉤は伝承や伝統と冠をつけそれがまた地方出ともなれば買い手の興味を引いたのは尚更のことで正に飛ぶように売れたのである。
作り手がいなくなれば当然使い手もいなくなる。そしてその存在自体が過去のものとなる。
現在、レベルラインが主流の中で撚り糸テーパーライン がメディアに取り上げられることは非常に稀である。そのことは今後ますますトバシのテンカラが姿を消していくことに繋がるだろう。
DaisukeTsuchiya